旅立つ家族 感想 SNSセレクション
山田勝仁さん(抜粋)
初演が2014年。つい昨日のことのようだが、もう9年経つのか。
初演を見た時に興奮気味に「アングラと新劇の老舗の幸福な出会い」と書き、「万人が見るべき舞台」とFBに書いた。
それから9年。上演回数は100回を超え、メインキャスト以外は大幅に若返った。
作品は上演するごとに進化(深化)する。
今回の舞台は初演よりはるかにスケールアップし、物語と俳優はさらなる深い境地にたどり着いた。
開幕。主人公・李仲燮(イ・ジョンソプ)の絵をモチーフにした二頭の牛の角突き合いが俳優の絶妙なフォーメーションで展開するのを見、出演者全員の合唱曲の高揚に胸が熱くなった。
同じく彼の絵をモチーフにしたラストシーンにもう涙ボロボロ。
初演を見て「万人がこの舞台を…」と思ったのは大袈裟ではない。私の感慨は間違いではなかったのだ。
愛のために生きた方子を演じた高橋の佇まいもいいが、なんといっても藤原の、狂気に至る演技が凄まじい。狂気が目に宿っている。
そして母親の小谷佳加。一幕終わりの慟哭に戦慄した。Project Nyxでの現実離れした奇矯な役もいいが、今回の母親役のように地に足のついた役が彼女の真骨頂か。方子の父役ほか数役を演じた津田二朗、そして山下教授ほか数役を演じ分ける青木和宣がベテランの風格と味で舞台に厚みを持たせた。
仲燮の友人の詩人具常(グサン)役の桑原泰がまた素晴らしい演技と歌唱。今までもほかの作品で見ているはずなのにどうしてこれまで彼に気づかなかったのか。歌も演技も正統派。ミュージカル俳優かと思ったくらい。要注目。方子の母親役の髙橋未央の精緻な芝居もいい。
文化座の役者の層の厚さよ。
韓国の民族芸能や合唱曲を織り込んだ本作は「音楽劇」といっていいだろう。
エネルギッシュな舞台はテント演劇で培った金守珍演出の迫力が詩的に昇華した大傑作。
角突き合う2頭の牛は日本と韓国、北と南、理想と現実といった、相対する、相矛盾するもの象徴に違いない。
このエネルギッシュな舞台は文化座の未来に向けた希望を象徴している。
因幡屋ブログさん
2014年の初演が好評を博し、全国公演を重ねた作品が、新しいキャストで再演された。新宿梁山泊主宰の金守珍が脚色、演出を担う。照明・映像、舞台美術や振付、殺陣、衣装などのスタッフには新宿梁山泊公演お馴染みの名前が並ぶ。公演パンフレット掲載の演劇ジャーナリスト・山田勝仁の寄稿「アングラと新劇の幸福な出会い」のタイトルの通り、両劇団の強い信頼関係が窺われる。
同じくパンフレット掲載の佐々木愛の寄稿によれば、佐々木は新宿梁山泊の魅力に引き込まれ、関西の在日コリアンのことを描いた『百年~風の仲間たち』の初演を観劇して、「もうこの人の力をお借りするしかない」と決意したという。寄稿には文化座が戦後間もない1947年、朝鮮の古典『春香伝』を上演し、1972年の再演で佐々木はタイトルロールの春香を演じたこと、韓国演劇界との豊かな交流の歩みなども丁寧に綴られ、今回の『旅立つ家族』への深い愛情が伝わる。
佐々木愛はたとえ未知のものであっても作品、劇作家や演出家に対して広く心を開き、柔らかく受け止め、果敢に飛び込んでゆく。柔軟性と勇気。次はそれらを文化座で活かすにはどうすればよいかを考え、実現する。作品を読む力、脚色・演出の手腕、公演を実現する実行力。何より演劇というもの、劇団と劇団員への強い愛情がなければできないことだろう。それが劇団ぜんたいのエネルギー、魅力=「劇団力」となる。『旅立つ家族』は、佐々木愛を中心とする文化座の「劇団力」が遺憾なく発揮された舞台である。
物語は日本の占領下にある朝鮮で生まれ、子どもの頃から絵を描くことの好きな李仲燮(藤原章寛)が主人公である。日本の文化学院美術科に進み、山本方子(髙橋美沙)と出会う。二人は困難を乗り越えて結婚し、方子は名を李南徳と改め、やがて男の子二人の母となる。しかし日本の敗戦と混乱により、家族は引き裂かれ、やがて仲燮は精神に異常を来たしはじめる。佐々木愛は現在の山本方子として、物語の語り部の役割も担い、戦争に翻弄された画家とその家族の数十年を見守る。
冒頭、二頭の巨大な牛が登場する。頭、胴体、足それぞれがパネルのようになっており、俳優が裏からそれを操作する。劇団唐組公演『鯨リチャード』(唐十郎作 久保井研+唐十郎演出)で、段ボールで作られた馬を思い出した。二頭の牛が激しくぶつかり合う迫力は、冒頭から客席を圧倒する。休憩を挟んで2時間40分の長尺だが、主人公夫婦はもちろんのこと、仲燮の母(小谷佳加)、方子の父(津田二朗)と母(髙橋未央)はじめ出演俳優のほとんどが、メインの役を誠実につとめるだけでなく、複数役を演じ継いで物語の骨格を支え、彩を添える。作り手の熱意が満ち溢れる舞台だ。
それだけに疑問を抱いたり、欲も出る。家族と別れ、やさぐれてゆく仲燮は、釜山の居酒屋に入り浸るようになる。店のおかみ(姫路実加)の人物像と仲燮との関係、距離感は非常に繊細で微妙と思われた。仲燮はおかみに子どものように甘えたりもするが、後年展示会に祝福に訪れる彼女の温かで清々しい様子からは、二人が深間にはまったとは見えない(考えたくない)と思わせるところがある。この二人の関係性を描くために、おかみに歌を歌わせる必要があるのだろうか。艶やかで達者な歌いぶりであるだけに疑問がわく。主人公夫婦が一目ぼれの一直線の恋愛だけに、おかみとの交わりをもう少し知りたかった。佐々木愛演じる現在の山本方子が、ほぼ語り役であったことも少し残念だ。朝鮮への道中で、ふたりの方子が並んで座り、いっしょに歌う場面は自然で温かい。もっと劇中の人物として佐々木愛を見たいと欲が出るのである。
三宅修さん
「旅立つ家族」ほんとに凄いです。キャストが若返ったこともあるのか、熱量がハンパないです。
そこに愛さんの抑えたナレーションが入って締めてます。
一幕の終わりは、レミゼかと思うくらいの迫力でした!
プロジェクションマッピングも本格的で、安易に映像を使ってる感じはありません。
ギリギリまで声をかけてほしいです。
観た後で、「こんないい芝居ならもっと声をかければよかった」と後悔すると思うので。
緑川道正さん
劇団文化座公演「旅立つ家族」を昭島市民会館・大ホールで感動観劇(主催:三多摩演劇を観る会)。
原作:金義卿(キム・ウィギョン)さん、翻訳:李惠貞(イ・へジョン)さん、脚色:金守珍(キム・スジン)さん&佐々木愛さん、そして演出:金守珍さん(新宿梁山泊)、主演:佐々木愛さんということで期待大の演劇公演だったが、それを遥かに超えた素晴らしい内容で演劇の可能性をも広げるものとしてもスタッフ、俳優さんたちにも大拍手だった。
日本による韓国併合植民地時代→日本の敗戦による解放→東西冷戦という大国の論理による国家分断→朝鮮戦争→→→と過酷な時代に生まれた芸術家肌の不器用な男が支配国であった日本に渡り絵を学ぶ。そこで後の妻となる女性と出会うが、戦局が逼迫して実家のある元山(ウォンサン)へと戻る。想いを断ち切れない日本女性は終戦間近の時期に危険な玄界灘を一人渡り画家の男と再会し、二人は結婚する、まもなく第二次世界大戦は終結するが朝鮮半島は混乱が続き、やがて朝鮮戦争が勃発。
一家は釜山から済州島にたどり着くが、妻と子供たちは貧困の中で健康状態が悪化し夫を韓国に残して日本に帰るが、それが家族の永遠の別れとなってしまうという実話を題材にした緊張感あふれる舞台ながら、新宿梁山泊的な舞台構築や効果的な映像、朝鮮の音楽と踊り、コロス(古代ギリシア劇の合唱隊)的な舞台表現など万華鏡的な展開は2時間半の長時間公演ながら終始惹きこまれてしまった。
榎本大輔さん
文化座の「旅立つ家族」を観てきました、文化座さんとは2007年からのおつきあい…たぶんこの作品は今回で三回目かな?韓国画家「イ ジュンソプ(李 仲燮)」の話…日本だと長谷川利行的な感じかなぁ…かなりこの芝居にはまって済州島まで行ったくらいです♪
さて…今回の演出は新宿梁山泊の金 守珍さんという方、どちらかというとアングラ系の劇団の方だそうです、状況劇場系なのかな?こうみえて(どうみえて?)中三の時に寺山修司の天井桟敷に「入れてくれ!」と直訴したことがありますw元奥様の九条映子さんに「高校は行きなさい」と優しく拒否られましたがww状況劇場とは黒テントのあった花園神社の裏にあった画廊で友人と秋山祐徳太子とライブイベントをやったこともあります♪
ま…それは良いとしてw
過去私が観た同作品とは大きく演出が変わっていた、なんだろう「エンターテイメント性?」集団の歌の音量と一人で切々と歌う方子の「ふるさと」の小さい小さい声の音量差が希望と不安、反抗と愛…の表現?正直ものすごくびっくりした演出でした!そして知っている話なのにワクワクが止まらない…そういう感じ♪もちろん文化座のお芝居に関してあくまで個人的な印象は、きちんと積み上げて大事なことを伝えていきたいという気持ちを感じる芝居かなぁ?と思ったりしてるのですが、今回は「たぶん出演者さん 超大変だったけれど めっちゃ楽しい芝居」だったんじゃないかなぁと思ったり♪ライブ音楽をやっているものとしていつもちゃんとできているライブだけれど今回は理屈抜きに楽しかった!っていう日がある…そんな感じ?文化座のお芝居が全部このテンションになったら…うぅ~ん…ですが、今回のお芝居は本当にビックリでワクワクでしっかり泣きました
あぁ~~また済州島行きたいなぁ…
佐藤文俊さん
『旅立つ家族』初演から約10年、既に100公演を超しています。今年は文化座創設80周年、ここ「あうるすぽっと」を皮切りに、四国・首都圏・関越・東北・北海道(演劇鑑賞会)、秋田、延べ51ステージの旅に出発します。近年、文化座、音楽劇も得意分野になってきたように感じます。ミュージカルに出演する方もいらっしゃいます。この劇団、演出家はいつも客演、西川信廣、鵜山仁、栗山民也ほか蒼々たるメンバー、今回は金守珍。メインキャストはそのままですが、全体としては大きく若返っています。佐々木愛の語りから始まりますが、「いつもの文化座」とは一味違うのです。シンプルな舞台、迫力ある合唱が心に響きます。分解した大きな「牛」が踊り狂うのです。音楽劇というか、殆どミュージカル。スタートからほんの数分で、ここは何処の劇団? そんな世界に浸れます。
心に迫る導入。舞台上手に現在の山本方子(佐々木愛)が現れ、李仲燮との出会いを語り始めます。5つのボックスに彼の作品がプロジェクターで映し出されるのですが、5番目の2頭の牛の絵。それが舞台上に飛び出し、分解した「牛」がアニメのように踊り狂います。そして、それを操る黒い衣装の俳優陣が大貫誉作曲の力強い歌を歌うのです。さらに、この作品のテーマ「牛」について李仲燮(藤原章寛)が以下のように語るのです。
従順な牛
怒れる牛
裏切らない牛
屈することのない牛
2つに引き裂かれてしまった朝鮮の牛
メインキャストがしっかり演じているのは勿論ですが、一般的には「アンサンブル」と呼ばれる若手俳優陣の動きがとても良い。ここ数年に入団した新人が中心。台詞は少ないのですが、歌で、姿で魅せます。シンプルな舞台、5つの大きなボックスによって、列車、船、展覧会場など、あらゆる場面に転換、それを形作る役目も「アンサンブル」にはあるのです。合唱だけでなく、メインの俳優はその場に合った歌を歌います。そう言えば藤原章寛はイッツフォーリズ『YOSHIKO~悔いなき命を~』(2019年)の主役。高橋美沙は俳優座劇場プロデュース公演『音楽劇 人形の家』(2022年)の再演で、古坂るみ子に替わってクリスティーネリンデ夫人を演じました。桑原泰はミュージカル座『BUNNY GIRL~十人兎色~』、『クリスマスに歌えば』(2022年)に、深沢樹は『ひめゆり』(2022年)に出演しました。2021年、文化座『音楽劇 ハンナのかばん』の主役を演じた市川千紘の歌声も忘れられません。桑原泰、「アンサンブル」の中にいないので、あんなに上手い歌い手をいつ使うのかと思っていたら、最後に具常(詩人)役でしっかりソロで聴かせてくれました。私の一押し、松永佳子は「アンサンブル」の中で生き生きと動き回り、六役、七役を演じる方も多い中、『しゃぼん玉』(2022年)で「馬鹿息子」を好演した津田二朗は何と印象に残る八役ですよ。1つの舞台、多くの人が結集して作り上げるものだと強く感じるのでした。一方、以前、この舞台で活躍していた水原葵、筆内政敏、斉藤直樹らの顔が既に無く、時の流れを感じます。若手の活躍ですが、次々「もっと若い」若手が入団してくるので、私の馴染みのある若手はもはや中堅なのかも知れません。井田雄大、為永祐輔、岡田頼明、中田千尋、早苗翔太郎、田中孝征ほかの方々です。昨年、神田時来組『龍馬が翔ぶ』に出演した岡田頼明、今日はこの舞台のもう1人の主役「牛」でしたね。
それにしても文化座、画家の話が得意のようです。1958年に初演、2020年、2023年、半世紀ぶりに上演した『炎の人』、その主役ゴッホに藤原章寛が好演。さらに言えば、2007年初演、白幡大介演じる靉光を中心に、戦時下の若き芸術家たちの姿を描いた『眼のある風景』。2015年、再演を果たしています。どの作品も芸術家の苦悩が半端ではありません。決して明るくはありませんが、演劇ならでこその感動が味わえる作品です。
歴史はなにを語るかより誰が語るかそんな気がした夜
松永さん、素晴らしく素敵でした。僕も頑張らねばです。
故郷や家族への深い愛、芸術への並々ならぬ情熱を持ちながら、動乱の時代に家族と離れ離れになり、貧困の中で亡くなったジュンソプ。
その作品を生かした演出や、エネルギッシュな朝鮮の歌や踊り、そして演技に圧倒されました。生きるということ、芸術をするということについて考えさせられます。
キャストはいずれもよかったけど、特に主演の藤原章寛さんの目が素晴らしかった。
他には友人・具常役の桑原泰さん、アンサンブルでは深沢樹さんが目を引いた。現在の山本方子を演じる佐々木愛さんの「ふるさと」も泣けた…。
文化座さんの舞台を観るのは2回目ですが、いつも本当に空間使い方が美しい。
開幕の牛も迫力あって好きだったな~~!!!
くるくる変わる舞台上が観ていてすごくワクワクしました。
実在の画家イジュンソプの波乱万丈な人生が丁寧かつ大胆に表現された作品で2時間40分があっという間に感じた!!
一人一人の芝居は勿論、群衆で表現する演出や舞台装置の演出もどれも素敵すぎた!!
家族に対しての愛も本当に素敵すぎて、休憩前直前から休憩後の中盤以降はぐっと胸が締め付けられながらも魅入ってしまったし最後は涙した。
本当に素晴らしき作品でした!!
素晴らしすぎてソワレ回トリプルコールやったし納得よね。
戦争もの苦手マンだけどこれはとてもおすすめ作品。
劇団文化座さんの『旅立つ家族』観てきました。凄い舞台でした!場面展開から音響照明、そして俳優さん達に気迫ある演技に歌!圧倒されました!とても考えさせられる作品でした。今回も桑原泰さんは格好よかった。
『旅立つ家族』、イジュンソプさんの実話を元にしたストーリーですが、演出から小道具大道具から、全てが目を惹きつける物の連続で、観終えた後の心への衝撃は凄いものでしたね…
文化座『旅立つ家族』とても面白かったです。オススメです!
アンサンブルが緻密でエネルギッシュ!!最前列で終始圧倒されっぱなしだった。劇団力を物凄く感じて素晴らしかった。
文化座『旅立つ家族』観に行きました。あの、これなんでなんでしょうね本当に。ハンカチを忘れた時に限って涙が止まらなくなるというこれは!!自分の魂の声に忠実に生きた男の、夢と愛と破滅の話。魂に従い、破滅へ向かう。けれど破滅を通して、彼は真実をみたんだと思う。生きることの真ん中に出会えた。
素敵なお芝居でした。演劇の持つパワーが溢れてました。
人の心が、戦争という苦痛の中で狂っていく様子はとても悲しくて、でもきっとこういう歴史が沢山あったんだろうと苦しくなりました。形は様々だろうけど。繰り返しちゃいけない。
劇団文化座、藤原章寛さん主演『旅立つ家族』10年前の初演も良かったけど、より洗練されて、涙腺崩壊していました。
ゴッホといい、今回のイジュンソプといい、熱い天才画家を演じさせたら藤原さんはピカイチ。佐々木愛さんの語りも芸術品です。若い方々に観てほしい作品です!
少女都市のアングラ全開演出とはまた違う金さんの演出に感動。
戦中戦後、激動の時代に翻弄された日本と朝鮮に生きた人達の強いエネルギーをひしひしと感じました。
劇団文化座『旅立つ家族』観てきたよ。圧倒的な熱量!!でも表現は繊細で。
こういう作品観ると、俳優の仕事ってカッコいいなって改めて思う。
小谷さん、めちゃくちゃ素敵だった!!
文化座さんの団員さんは和気藹々としている場面がとても魅力的で、いつも顔がにやけてしまいます。とてもカロリーの高い作品だったと思います。まだまだ気合を入れて頑張って下さい!応援してます。
恥ずかしながら、イジュンソプさんのお名前は今回初めて知ったので、開演前の幕に描かれていた《黄牛》が彼の作品だとは思っていなかった。
今でこそ国民的画家と言われるイジュンソプさんだが、生前は特に評価されることなく、不遇のまま39年の生涯を終えている。日本留学時代に知己を得た山本方子さんと結婚して二児をもうけるも、貧困、病気、別居、そしてなにより画家としての苦悩が彼を襲う。本作はそんなイジュンソプさんの半生を彼の作品を交えつつ描いていて、徐々に追い詰められて、看護師の首を絞めて「メフィストを呼んでくれ!」と叫ぶなど、精神にも異常をきたしていく。パーツで分かれた牛2頭を闘わせるシーンや国際市場での活気あるシーンなどは金守珍さんらしいところで、何曲か歌もあり。
キャストでは、主演の藤原章寛さんが実に素晴らしく、特に目の輝きが場面によって違っていて、乗り移ったかのようだった。
佐々木愛さんの存在感にも説得力があり、終盤の「ふるさと」は泣けた…。ちなみに現在の山本方子が登場するのは佐々木愛さんと金守珍さんによる脚色で、後に韓国でもこのバージョンで上演されたとのこと。
他には親友・具常役の桑原泰さん(最後に渋い歌声も披露)とアンサンブルの深沢樹さんが印象に残った。
劇団文化座『旅立つ家族』また本当に良い演劇に出会えて、とても幸せ。こんな心の揺さぶりのために、生きているよなあ。と思う。
文化座アプリのチケット購入、入場体験、楽しかったです。がんばるぞー。
二頭の牛のド迫力で半泣きからの可愛い牛に癒され、ジュンソプの人柄に魅了され、2時間半に「生」が詰め込まれていてとても良かったです…。
青木和宣さんはなんと7役も。主演の藤原さんよかった、最近何本か観てますが注目しています。
昨日、観劇してきた!劇団文化座さんの『旅立つ家族』久々の観劇で面白かったなあ。
先日観劇したこの作品が、今日、東京公演最終日らしいです…!荒ぶる牛に魂震えました。26人もの座員で演劇つくりあげているの凄い。本当にすごい!人の力。良い千穐楽、そして旅公演を!ぼんぼやーじゅ!
昨日は一月に引き続き2度目の劇団文化座さんの『旅立つ家族』観てきました。
前回2回、後半2回号泣…ハンカチ握りしめてたくさん泣いてきました(冗談ぬきでガチ泣き)本当に素晴らしいお芝居をまた観に行きます。
昨日、久々の演劇鑑賞。心が熱くなりました。出演者もほとんど様変わりしましたがどの方も役割りどころかしっかりはまっている印象でした。エネルギーをたくさんもらえました!舞台ってやっぱりいいですね!東京公演後も旅が続くとのことでして応援しています。
劇団文化座の皆様、あうるすぽっとの皆様、スタッフ及び関係者の皆様、舞台【旅立つ家族】東京公演に関わる全ての皆様、本当にお疲れ様でございました。
以前までの生活に限りなく近い状況ではありますが、より一層の体調管理の必要性という課題は残り、皆様に置かれましても油断ならない日々が続いているかと存じます。
無事に東京公演での千秋楽を迎えられましたのは一重に皆様のおかげです。改めまして、観劇の機会を頂き厚く御礼申し上げます。
イ・ジュンソプという方を本作で初めて知ることとなりましたが、幕に投影されていた絵を見るに迫力のある画風であると感じました。
唸り声が轟き力強く大地や空気を震わせるような、のびのびと暮らす穏やかな表情で描かれる私のイメージの中の牛とは違い、素人ながらそんなタッチの絵描きになるにはどのような人生を送ったのか始まる前から様々な考えを巡らせておりました。
導入では照明が落ちないままというあまり経験の無い演出にワクワクしつつ、古い手紙やいくつかの絵を懐かしそうに見つめる方子さんの声がふわりと優しくホール全体を包むように感じました。
その声は響き渡り、舞台の中、あるいは絵の中、あるいは歴史の中へと誘って下さるような感覚で、相変わらず冒頭から客席を引き込むのがとてもお上手であると痛感致します。
そんな柔らかな感情を受け取りつつ、戦争という私の知らない時代の恐ろしい事実と混ざり合い、禍々しさを感じる巨大な牛の登場には迫力と畏怖に近いものを感じたのを覚えています。
表情はもちろん、節々をパネルで表現することで生き物のように動く様子はいい意味で気味が悪く、血が通っているかのような逞しさと強さを感じました。
この牛を複数人で演じることは事前知識として知っていましたが、その動きの繊細さには心底驚きました。
正面からの姿は役者の皆様の方からは見えないはずなのに、ぶつかり合う音に合わせた一糸乱れぬ動きはとても見事でした。きっと、相当量の練習と動きの研究をされたことと思います。本当にカッコよかったです。
若き日のイ・ジュンソプが登場すると、先程までの猛々しさはなく、暖かな陽だまりと自然の中でのびのびと過ごす穏やかさが際立ったように思いました。
一頭の牛にありのままの姿が美しいとして睾丸をよく見せろと言う様子は一途に絵を描くことを愛しており、絵に対する思いに恥も外聞も関係ないと言わんばかりだったのではないでしょうか。
彼は自分に正直で、思ったことは口に出てしまうそんな素直な青年だったと思います。
物事の本質を理解するまで「描くことは出来ない」と語り、美しい世界を心から愛している、本当に純粋な青年だったのでしょう。
家族にも愛されていたことが分かります。
特に、彼のお母様は日本へ絵を学びにいくことを応援し、会ったこともない日本人女性を妻とすることを認めるなど、そう簡単に受け入れることができないであろう事柄にも笑顔で応える器の大きさを感じました。だからこそ、生きるために別れを決断したお母様の叫び声には圧巻させられました。
優しく、少し茶目っ気もある暖かな母親像から一転し、悲しみと覚悟と祈りが混ざった叫びに大きな愛を感じて鳥肌が立ったのを覚えています。
方子さんからの愛は苛烈で、人生を賭けてでも愛する人のそばに居たいという思いからの行動力には驚くと同時に心から尊敬しました。
淑やかに見えて竹のように折れはしない芯の強さ、夢見がちな乙女かと思えばチャンスは絶対に逃がさない勘の良さ、強い意志を感じる瞳とそれを言葉にして伝える姿にイ・ジュンソプは惚れ、救われていたのだと感じます。
そんな愛の物語りだったからこそ、狂いゆくイ・ジュンソプの絶望が際立ったのだと思います。
愛し、愛され、才能にも恵まれ、応援してくれる周囲の人々が居たにもかかわらず、己の世界が認められないという現実を受け入れることが出来ない様子はなんとも哀れでした。
とりわけ、ラストで己の描いた牛に潰されている様子はとても胸が苦しかったです。
冒頭で似たような動きは見たはずですが、それとはまた違った恐怖といいますか、歯を食いしばるような悔しさを感じた気がします。
自己肯定感が低く、でもプライドは高いというとても悲しい生き物のように思いました。
もちろん、これは時代のせいでもあったはずです。形は違えど、同じように苦しんだ家族は多かったのでしょう。
戦争がなければ、極度の貧困が無ければ、国同士のいざこざに巻き込まれていなければ、愛する家族と大地から離れる必要は無かったのです。
現在も小規模なものから大規模なものまで、あらゆる争いが繰り広げられています。
繰り返してはならないと、先人たちが声高らかに叫んでいるのが聞こえないのでしょうか。
彼らには、この牛の怒りがこもった悲しい呻き声がきこえないのでしょうか。
プライドは足元に置いておけば良いのです。頭を垂れても、その目には貴方の大切なものが映るはずです。捨てる必要はないのですから、足元に丁重に置いておくのです。
それになぜ気づくことが出来ないのでしょうか。
少し話しが逸れましたが、複雑に大きな時代とある家族の人生が絡み合った深みのある物語を届けて頂き、ありがとうございました。
また、この物語の主人公は「俳優たち」によって大きく支えられていたと思います。
牛のパネルはもちろんですが、早着替えなどで沢山の存在を演じ、舞台上の空間を生み出して奥行きを与えてくれる存在に最大の賛辞を送らせて頂きたいです。
市場の活気溢れる様は特に素晴らしく、貧困に苦しんでいるはずですが少しでも盛り上げようと振る舞う姿は当時の人々が目指したものだと感じました。
アタリメで叩く音は非常にこ気味良く、小道具を駆使した喧騒や、鮮やかで活気のある動きが色濃く映りました。
しかし、その裏には苦しみ抜いたそれぞれの人生があります。ひとりひとりのそれを思うと、楽しげな様子にも胸を打たれたと感じます。
明るい市場だからこそ、乱入してきた薄暗い影の残酷さが際立っておりました。
「旅立つ」という言葉にあまりにも沢山の意味が込められた舞台だったと思います。
故郷から旅立った人々、家族から旅立った人々、人生から旅立った人々、その役割から旅立った人々。出会いもあれば別れもあり、僅かばかりでもその中に幸せを見い出せたことが彼らの救いになっていることを心から祈っております。
非常に複雑かつ、奥行きのある作品でした。視点や環境を変えればさらに沢山の表情に出会うことが出来るでしょう。
また、実際の山本 方子様は昨年お亡くなりになったという記事を拝読しました。
この場を借りてご冥福をお祈りします。
彼女が、イ・ジュンソプと牛の引くあの荷車に本当の意味で乗り込むことが出来ていればいいなと、胸が熱くなりました。
長々と書き連ねましたが、改めましてここまで素人の感想文にお付き合い頂き誠にありがとうございます。
誤字や脱字など、表現の違和感等は温かい目で見ていただければ幸いです。
最後になりますが、体調には十分お気を付けいただくことと、ご自愛のほど忘れずにお過ごしください。
現在も日本各地で作品を届けられている皆様の無事と、素敵な千秋楽を迎えられることを切にお祈り申し上げます。