僕らの文化を

 

 僕らが最初に韓国に持って行った芝居『千年の孤独』に渡り蝶が出てくるんですね。これはチョウセンシジミという種で、玄界灘を行き来していた蝶々なんです。


佐々木 沖縄の人も言いますよ、海を渡る蝶々……。


 なんか今、絶滅しちゃったそうなんですけど。僕らもそういうエネルギーを持っていいんじゃないかなと思って。心の中にね、実体はなくても一つの言霊として。僕ら言い続けていったら、またどっかから渡り蝶が飛んでくるんじゃないかなというイメージがあるんです。
今度映画の第二弾は『いつの日にかきっと……』という題名なんです。ぜひ今度映画の方もね。『夜を賭けて』をまず観てください。これは父親たち、男の世界を描いたんです、アパッチ族と言ってね。大坂城のまわりに東洋最大の兵器工場があって七万人働いていたんですね。それをアメリカは八月十三、十四日に徹底的に爆撃したんです。広島・長崎の原爆の後です。再生できないように全部破壊しちゃった。だからそこに白金とかいろんな金属が埋まってる。その川のこっちに朝鮮人部落があって、あるおばあちゃんが掘ってそれを売ったらすごいお金になったんですよ。はじめは昼間に堂々とやるんですけど、国有財産だから捕まっちゃう。だから夜中にそれを掘りに行くというのが『夜を賭けて』なんです。
この人たちが捕まって大村に送られて、それで北に行ったし、またこの人たちはどこから来たのかというと四・三事件で日本に来た人たちなんです。だからずーっと不幸なんです。それで今また脱北者として戻ってくる。一体なんなんだろうと。それで僕の映画で山本太郎が「もう逃げるのいやや」と言うんですね、「俺はここにいる」と。で、服従はしない。それが僕らのテーマですね。もうここにいるんだ。幻想を抱いちゃいけない、しっかり日本という国に根をおろして、そこで僕らの文化をつくっていこうと。


佐々木 お忙しい時間を割いて会っていただいたのは、新しい年を迎えるにあたって金さんのパワーを是非いただきたいと思ったからです。


 いやいやいや、『てけれっつのぱ』もすごいパワーだったですよ。文化座ってすごいですね。佐々木さんのとてもすてきなおばあちゃん役にも惚れ込みましたが、僕、有賀さんのファンになっちゃいました(笑)。メインはメインで押さえながら、とても自由にやっていて面白かったですよ。これこそ演技、演じる技ですね。
僕は終演後の語らいってすごく必要だと思ってるんです。テントではそれをやっていたんですね。終わった後、お客さんたちに残ってもらってお話ができるというのは、創り手として必要だなと。それで僕はテントが好きだし、ここのスペース(アトリエ)もつくったんです。ぜひまたご覧になった時にはお話を聞けたら嬉しいです。
在日の文化を育てるには在日だけじゃなくて日本の方たちと一緒にやらない限りは何の意味もないんで、ぜひ心ある人たちと力を合わせてやっていきたいと思います。


佐々木 こちらこそ。今日はありがとうございました。

 

2012年12月27日収録。芝居砦・満天星にて

速記者=加藤 薫  写真=坂本正郁